Story

両親の遺産を受け継いだリータは、作家のアルフレッドと結婚しフィヨルドが見下ろせる丘の上の一軒家で暮らしていた。

二人の間にはエイヨルフという幼い息子がいて、長い旅行から帰って来たアルフレッドは今までの教育方針を変え、友達と遊ぶことの大切さを教えようとする。

そこへ妹のアスタ、鼠婆さんという奇妙な訪問客、現場監督のボルグハイムが訪ねてくる。

お互いの優しさがすれ違い、決して変えることのできないある事実へと辿り着く。

北欧の大自然が見せるこの星とヒトの本当の姿とは・・・。

Roots

ヘンリック・イプセンは1828年~1906年を生きたノルウェーの劇作家です。代表作は『ペール・ギュント』『人形の家』『野鴨』『民衆の敵』『ヘッダ・ガーブレル』などで、シェイクスピアに次ぐ知名度があり近代演劇、リアリズム演劇の父と称えられています。

市民の日常生活をベースに社会問題を取り上げる作風は当時凄まじい賛否両論を巻き起こしたそうです。

近代演劇は個人の内面を隠し事なく描くことを前提としていて、個人と個人がぶつかることで当時の社会問題が色濃く反映されることになります。それまでタブーとされていたあらゆるもの(生理現象を含む)を積極的に取り入れ、新しい時代へと突き進もうという力強さがあります。

イプセンの生きた時代というのはナポレオン戦争後~ノルウェー独立へと向かう激動の時代で、日本では黒船来航~明治へと向かう頃なので社会の急速な変動が様々な混乱と期待を巻き起こしていたと推測できます。

ちなみに、イプセンは祖国を嫌っていたようで大半を他国で過ごしていたそうです。

現在のノルウェーはオーロラやフィヨルドといった大自然、油田による貿易黒字、社会福祉の充実など幸福度ランキング上位国家という肩書があるほど豊かな国です。

そして、環境問題に対する意識がとても高い国でもあります。隣国スウェーデンのグレタ・トゥーンベリによる訴えが世界中を揺るがしたことも記憶に新しいですが、北欧という厳しい自然と共存していく人々にとっては、地球規模の変化もより身近な体感として実感しています。

毎年国会では「野生のオオカミを何匹銃殺するか」を議論します。一言では表せない様々な内情が含まれオオカミというシンボルに象徴されるこの現象が、イプセンの戯曲たちを現代に結び付け一層の説得力を持って生かし続ける結果になっているのは皮肉というほかありません。

今作品は、イプセンの生きた時代と現在が『大自然』によって結ばれ、世界と関わる極めてプライベートなお話となっています。

それはこれからの未来にきっと活かされる価値観だと信じています。